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シネマの創生-スコセッシ「ヒューゴの不思議な発明」

【今日の言葉】

それに『はなればなれに』は、『勝手にしやがれ』の続編です。
(ジャン・リュック・ゴダール「ゴダール映画史」)

【読書日記】

こんばんは。ともです。
今日のテーマは、シネマの創生。

■スコセッシ「ヒューゴの不思議な発明」

スコセッシ「ヒューゴの不思議な発明」をファンタジー映画だと思って観に行くと、前半は、確かにディズニーによくあるファンタジー映画の雰囲気を醸し出しているかもしれなくて、そう騙されるかもしれないけれど、後半にになると、「ヒューゴの不思議な発明」の観客は、「映画が生まれた瞬間」に、いやおうなしに立ち会わされることになる。

「きみたちは証人だ、映画が生まれた瞬間の。」

「えっ、いつから、証人台に立っていたんだ!」と、思っても後の祭り。既に、オカネは払っちゃっているじゃないか。さあ、よってらっちゃい、みてらっしゃい!じゃあ、観るしかないね。

いやいや、よくよく考え直してみると、前半と後半を分けることになる場面で、まさに、主人公が、機械にハート型の鍵を差し込んだ時点で、それは、映写室のうまい比喩だということにわれわれは気づかなければならなかったのかもしれない。

いやいやいや、もっと、よくよく考えてみれば、機械仕掛けの時計の裏から、駅の様子をのぞく少年は、映画を撮ることの隠喩、だったことに、われわれは、もっと早く、気づくべきだったのかもしれない。

いやいやいやいや、もっともっと、よくよく耳を澄ましていれば、そもそも、1930年代のパリで、イギリス訛りの英語を日常会話で話すフランス人などいるわけなかったと、われわれは気づくべきだったんじゃないか。なんと、映画に騙されていたことか。

とはいえ、そもそも、映画が人を騙すのは、1895年にリュミエール兄弟の「列車の到着」がグラン・カフェの地下で上映されたときに、手品師のジョルジュ・メリエスが観客としてまぎれこんでしまってから、歴史的には、「既に決まっていた」こと、だったのではないか。だから、メリエス「月世界旅行」は生まれたのじゃなかったか。

■グリフィス「イントレランス」

そうして「騙された観客」に、憤慨させる余裕も与えず、スコセッシは、リュミエール「列車の到着」を観た観客が「眼の前に迫る汽車に驚く」という伝説の場面を再現しては、「本当にやっちゃってるよ」と「騙された観客」を笑わせた後に、汽車に驚いた劇中の観客がバツの悪い思いで爆笑し噴き出してしまう場面まで撮っているのだ。

劇中の観客と、現実の観客が、同時に笑うなど、いかにも映画のいかがわしさを表しているじゃないか。しかも主人公の悪夢の中で、さらに、汽車に轢かれる場面を繰り返し描いて、「騙された観客」を、ドキドキ、ハラハラさせたりもする。

かと思えば、「フィルム・ソシアリスム」という題名の映画を撮ったゴダールに、「慎ましやかなやりかたで労働者を撮っている」とつぶやかせることになる、リュミエール「工場の出口」まで、劇中映画としてすらりと流しているのだから、「騙された観客」に憤慨する暇などあろうはずもない。グリフィス「イントレランス」が流れた暁には、「ああ、もう、好き勝手にやっちゃってるよ」と、「騙された観客」は、あきれて映画を観続けるしかなくなるのだ。

■タビアーニ「グッドモーニング・バビロン!」

「騙された観客」は、かつて、グリフィス「イントレランス」をトリビュートした、もう一つの映画があったことを思い出す。20世紀初頭のミケランジェロ達は、映画のセットを作り、女優を愛し、戦場に死ぬ。いかにも不寛容(イントレランス)な時代に生きた、男女を描いた佳作。「グッドモーニング・バビロン!」。

「ヒューゴの不思議な発明」は、「イントレランス」が公開された後の1930年代の時代を描き、戦争に傷ついた人々も描き出す。

映画と戦争。戦争と平和。平和と映画。そしてまた、映画と戦争。

このループが、20世紀の歴史だったのだと、言いたかったのか、「騙された観客」には確かなことはわからない。ただ、「ヒューゴの不思議な発明」は、20世紀の初頭にうまれた、映画と世界大戦という2つのものの、うまれたその瞬間を、映画の記憶としてとどめようとしていることは、確信できるのだ。

では。

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