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あなたらしく生きること-石井あゆみ「信長協奏曲」、曽田正人「MOON」

【今日の言葉】

Be yourself, no matter what they say.
(Sting “Englishman in New York”)

【読書日記】

こんにちは。ともです。
今日は最近気にになったマンガからです。

■石井あゆみ「信長協奏曲」

現代から戦国時代へタイムスリップし、信長のように生きる。といえば、すでに半村良「戦国自衛隊」という名作SFがあるのですが、石井あゆみ「信長協奏曲」は、そんな小説があったことすら忘れさせるような面白い信長像を提示しています。

勉強嫌いで、授業なんかまるで聞いていないという主人公の自由さは、東村アキコの実弟・森繁拓真が描く「となりの関くん」とタメを張るキャラクター設定。(ちなみに「関くん」は避難訓練の回がすごくいい。)そんな現代っ子が戦国時代に行ったらどうなるのか、というまったく新しい自由な信長像と、奇想天外なんだけど説得力のある歴史解釈を差し出しています。

「いーや。好きに生きよ。」

というセリフにもかかわらず、主人公は、どんどん我々が知っている歴史上の信長の足跡をたどっていきます。すでに伏線が張られているとおり、このマンガの最大の見せ場は「本能寺の変」にあり!と思われるのですが、奇想天外なだけに「先が読めない」という、歴史もののはずなのに続きを早く読みたくなる不思議なマンガです。
あと、信長の奥さんの帰蝶がムチャかわいすぎです。

■曽田正人「MOON」

昔、週刊スピリッツに連載されていた「昴」の続編に当たるのが新章「MOON」。バレエの抜き出た才能をもったヒロインを、圧倒的な筆致で描いた紛れもない傑作です。やや中途半端に終わってしまった「昴」の続きが読めるとは思っていなかったので、「MOON」第1集が発売されたときは、再開を待ち望むファンは意外と多かったのだなと驚きました。1ページ目を読み始めただけで、怒涛の物語が迫ってくるのを感じられます。

熱いオーラとほとばしる才能を放つヒロインのスバルを、映画にしたら、さぞスゴいことになるだろうと長いあいだ思っていましたが、実は「昴」を映画化した黒木メイサ主演映画よりは、ナタリー・ポートマン主演「ブラック・スワン」の方が、このマンガの息づかいや世界観に近く感じられます。

このヒロインは、はみ出た才能が、結果的に周囲をふりまわしてしまうところが、魅力なのですが、最新刊の「MOON」第8集では、「パワーを内に込めること」をヒロインは試みるようになります。「らしく」ありません。

あなたらしく生きること。誰がなんといおうがかまわない。

自由に生きようとする主人公2人の軌跡は、奇しくも、一方では知らない間に歴史をなぞり、他方では自分を抑制することに向かいます。自分らしく生きることは何と難しいのでしょうか。そんな問いかけを、石井あゆみ「信長協奏曲」と曽田正人「MOON」はしているようです。

こんなに自由で不自由な主人公を描けるのは、この二つの作品を神のように生み出している「作者」が、実は誰よりも「自由」で「不自由」だからかもしれません。

では。

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