« レインボーブリッジの恋人―是枝裕和「空気人形」 | トップページ | 贈りものに関するエッセー - ホワイトデーに寄せて »

非-有機的な<生> Vie non-organique-市川春子「虫と歌」

【今日の言葉】

言葉をなくしてしまう
私のこと忘れても
永遠にお兄ちゃんのこと
好きよ
(市川春子「虫と歌」)

【読書日記】

こんばんは。ともです。
今日は市川春子「虫と歌」または非-有機的な<生>について。

■非-有機的な<生> Vie non-organiqueとは何か

非-有機的な<生>とはひとことでいえば
「有機体が死んでも生は残る」ということ。
ドゥルーズ哲学の概念です。

じゃあ輪廻転生と何が違うのか、という疑問もすぐに浮かぶのですが、東洋哲学と西洋哲学を跨いで手に負えなくなるので脇においておきます。
ここでは、最近読んだ藤田尚志「ドゥルーズか、ベルクソンか」に卓越した要約が示されていましたので、その整理に依拠してみましょう。

■生の哲学

ドゥルーズ哲学は独特の「生の哲学」を展開しました。
生命は個体の有機組織に閉じず、有機体と無機体の境界なく、常に外部環境に開かれ、直接的に接続していく、というものです。

存在するが作用せず、内的で純粋な「感じること」として存在する力、すなわち純粋に潜在的な「魂」の流れを「内在」と呼び、
その現働化である単なる生、「ひとつの生」を重視しました。

■市川春子「虫と歌」

マンガです。
4つの短編がありますが、
ここでは「日下兄妹」をとりあげます。

肩を故障した高校球児の主人公は、家でタンスのネジあてが外れて飛び回るのを見ます。成長したネジあては人形のような形になり、主人公の生まれてこなかった妹の名前であるヒナと名づけられます。読書が好きなヒナはある日、自分が本当は流れ星で、あとひとつだけ願いを叶えると伝え、そして...。

と書くと荒唐無稽なSFのようですが、丁寧な絵柄で説得力のあるストーリーテリングになっています。

で、この話を読むと「ひとのくずとほしのちりの兄妹」という言葉が出てくるのですが、まさに「有機体と無機体の境界のない」「魂」のふれあいと「ひとつの生」が実在するように感じられるのです。

そしてラストがまさに非-有機的な<生>を絵にしたような終わり方になっているなあと感心してしまうのです。

他の短編では「星の恋人」が秀逸です。
この冬一番のお勧めマンガですね。

では。

|

« レインボーブリッジの恋人―是枝裕和「空気人形」 | トップページ | 贈りものに関するエッセー - ホワイトデーに寄せて »

アニメ・コミック」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/526219/47107240

この記事へのトラックバック一覧です: 非-有機的な<生> Vie non-organique-市川春子「虫と歌」:

« レインボーブリッジの恋人―是枝裕和「空気人形」 | トップページ | 贈りものに関するエッセー - ホワイトデーに寄せて »