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「3月のライオン」は羽海野チカ版エヴァである

【今日の言葉】

...だって

孫と将棋ができるの

たのしみにしてるみたい

(羽海野チカ『3月のライオン』)

【読書日記】

こんにちは。ともです。

最近、うちの息子は将棋づいていて

お正月にはおじいちゃんと勝負をしたり

昨日は小学館の大会に参加してみたりと

楽しいみたいです(まだ、よわっちいんだけどね)。

というわけで今日は将棋マンガ。

     羽海野チカ『3月のライオン』

『ハチミツとクローバー』の作者による将棋マンガです。

対局よりも主人公のドラマが主で、

将棋を知らなくても、楽しく読むことが出来ると思います。

その点で、同じ将棋マンガの能條純一『月下の棋士』や

柴田ヨクサル『ハチワンダイバー』とは

ちょっと、趣きが異なるのではないかと思います。

(ただ、作品中には『月下の棋士』へのオマージュが出てきます。

知ってる人には、かなり笑える場面なんだけど)

以下、この作品を紹介というよりも

(読めば誰でも楽しめる絵とストーリーなので)

表面的な楽しさの裏をちょっと分析してみます。

     ジェネアロジーの物語

将棋じゃなくて、何が主題なのかというと、

まず主人公の「桐山零(れい)」とヒロインの「あかりさん」一家を中心にした、

周囲の人たちの交流や非交流が描かれています。

で、注目したいのは、主人公とヒロインのそれぞれのジェネアロジー。

双方とも、両親がすでに亡くなっていたり、語られていなかったりします。

なぜか、祖父は両方とも生きている点も、不思議と一致するところです。

その二人が擬似家族のように食卓を共にする姿を、

作者は何の解説もなく提示します。

そして、フラッシュバックの手法やお盆の情景を描くことによって、

断片的にジェネアロジーを種明かししていきます。

こういう極端なジェネアロジーを持つのは、

『神話』の登場人物に多いことを明らかにしたのは

レヴィ=ストロース以降の文化人類学。

王制のジェネアロジーに多いようです。

実は、主人公が将棋会の『王様』になることが

示唆されているのではないでしょうか。

     「レイ」は綾波ぢゃなくて...

もうひとつ注目したいのは、エヴァ以降のアニメ作品からの影響(と思われるもの)。

「明朝体黒ベタ白抜き」は、エヴァで使われた手法。

この作品には多用されています。

(確か市川昆の映画のパクリと庵野監督は言っていた気が)

そう思うと主人公の「桐山零」の名前も「綾波レイ」に因んだものかと思われます。

(複雑な「綾」に対する直線の「桐」。「波」に対する「山」。

カタカナに対する漢字のファーストネーム。少女に対する少年。

と、意識的にコントラストが作られています)

それに加えて、零の義姉のサディスティックな物言いは、

『エウレカセブン』のアネモネ的なキャラクター設定になっているなあ、

と僕は思いました。

     戦えば戦うほど悩む主人公

エヴァのストーリーは簡単に言ってしまえば、

戦えば戦うほど悩む主人公の(成長もしくは成長しない)物語だったのですが、

この主人公も対局の度に悩んでいきます。

この点、エヴァの物語をなぞりつつも

巨大ロボットを使わないで、現代の日常でギリギリに戦う場所を

「将棋」に見つけたのは、作者の慧眼とでもいうべきでしょうか。

     個人的には...

個人的には、ヒロインの「あかりさん」のキャラに注目です。

「ふくふく好き」=「メタ専女子」!

...ちょっと、救われた感じです。

じゃまた。

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